知る人ぞ知る、大昔(2000年辺り)の Windows CE 用 Microsoft 純正無料 IDE です。おそらくこれが最も使いやすいと思いますが、激古なので C++ の新しい機能はほぼ使えないことと、Windows 2000 と Windows XP でしかフル機能が使えないという難点があります。私は組み込み機器に C++ の最新機能など期待していない(笑)ことと、奇跡的に何とかギリギリ動作する Windows XP パソコンを所有しているという理由で現在主に使っています。ただし後述の CeGCC が使いこなせるようになったら乗り換えるかもしれません。
環境構築
まず、 Microsoft Download Center (直リン) からダウンロードしてください。これは自動解凍式の圧縮ファイルになっているので、実行して適当な場所に解凍してください。それで得られたファイルの、setup.exe を実行し、あとは手順に従ってください。なお、途中でプロダクトキーを聞かれますが、先ほどのダウンロードページの「インストール方法」欄に記載されているものを入力すれば大丈夫です。
最後に、Standard SDK をインストールします。なお、Windows 2000, XP の場合は両方の SDK をインストールしておき、ビルド時にどちらを使うか選択することも可能です。
Windows Vista 以降であるか、他の CE4 系デバイス(シグマリオン3など)も対象とする場合は"3"で確認した作業用フォルダ内の SDK フォルダに入っている setup.exe を実行し、指示に従いインストールします。ただし、Windows Vista 以降の場合は Windows XP (Service Pack 3) の互換モードを設定して実行します。
Windows 2000, XP であり、他の CE4 系デバイスを対象としない場合は Windows CE 5.0 の Standard SDK をダウンロードし、インストールします。SHARP Brain のネイティブにより近いものができるのはこちらです。
プロジェクト作成・ビルド
まず、左上の「ファイル(F)」から「新規作成」をクリックしてください。その後、下の画像のように設定してください。CPU に関して、 SHARP Brain は ARMv5TEJ ですが、このコンパイラにはないため ARMv4I を選択してください (SHARP Brain 以外の CE 端末用のコンパイルも行いたければ、ARMv4I に加えてその他の CPU を選択してもかまいません)。設定できたら「OK」を押してください。
(2021年3月28日更新) ShowWindow(hWnd, SW_MAXIMIZE); が CeGCC で利かない原因が判明しました。どうも CeGCC のヘッダファイルは通常版 Windows 用のものを流用しており、さらに Windows CE での定数は通常版 Windows とは一致しないようです。よって、今回の場合 SW_MAXIMIZE がコンパイル時に Windows CE における正しい数値に展開されなかったことが原因です。これ以外にも同様の問題は存在し、例えば最小化ボタンを表示させたはずが最大化ボタンが出たりします。なぜ定数を通常版 Windows と一致させなかったのかと Microsoft を恨みたくなりますが、eVC4 等の他のコンパイラに付属のヘッダファイルを参考に直接書き換えたり、ヘッダファイルごと置き換えてしまったりして対応することになると思います。
おわりに
今回は、SHARP Brain 用ソフトウェア開発の方法をまとめました。もしかしたらこういうのは Brain Wiki を拡充する方針で書くべきだったのかもしれませんが(笑)、参考になれば幸いです(2021年3月11日追記: ちゃんと書きました)。SHARP Brain のハックに興味がある方は、Brain での Linux 起動など、様々な挑戦が行われているコミュニティ Brain Hackers があります(ここに紹介があります)ので、そこに参加してみても面白いかもしれません。ただし、Brain Wiki 及び Brain Hackers は当部 (OUCC; 大阪大学コンピュータクラブ) とは一切無関係ですのでご注意ください。
なお、今回は Win32 API プログラミングについては一切触れていません。興味がある方は、Windows プログラミング入門 - Web/DB プログラミング徹底解説 が参考になると思います。ただし、C/C++ をそれなりに理解していることが求められます。また、最も原始的な方法となるため、比較的レベルが高くなります(高2の頃、Hello, world! にたどり着くまでに 1,2 週間かかりました)。さらには調べてもなかなか出てこない Windows CE の独自仕様も相当あるので (Command Bar が代表例)結構大変です。でも電子辞書で自作ソフトが動作する感動はなかなかなものです!